植物性たん白と健康
たん白質摂取の重要性
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」は、健康な個人及び集団を対象として、 国民の健康の保持・増進、生活習慣病の予防のために参照するエネルギー及び栄養素の摂取量の基準を示すものです。
たん白質については、
①20 種類の ʟ─ アミノ酸がペプチド結合してできた化合物であること。
②他の栄養素から体内で合成できず、必ず摂取しなければならない。したがって、たん白質は必須栄養素であること。
③20 種のアミノ酸のうち、11 種は他のアミノ酸又は中間代謝物から合成することができるが、
それ以外の9種は食事から直接に摂取しなければならず、それらを必須アミノ酸と呼ぶこと。
が述べられているほか、
④現時点ではたん白質の耐容上限量を設定し得る明確な根拠となる報告は十分ではないことから、耐容上限量は設定しないこと。
⑤現時点で特定のたん白質(例えば、動物性たん白質又は植物性たん白質)や特定のアミノ酸、特定の食品を勧める十分な根拠は得られていないものの、
たん白質の過剰摂取が2型糖尿病の発症リスクとなる可能性を示唆したコホート研究が複数あり、そのメタ・アナリシスは、
総たん白質及び動物性たん白質は2型糖尿病の発症リスクとなるが、植物性たん白質は関連がないか、むしろ予防的に働いている可能性を示していること。
にも触れた上で、下表の摂取基準を示しています。
たん白質の食事摂取基準
性別 | 男性 | 女性 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年齢等 | 推定平均 必要量 |
推薦量 | 目安量 | 目標量1 | 推定平均 必要量 |
推薦量 | 目安量 | 目標量1 |
0~5 (月) | – | – | 10 | – | – | – | 10 | – |
6~8 (月) | – | – | 15 | – | – | – | 15 | – |
9~11 (月) | – | – | 25 | – | – | – | 25 | – |
1~2 (歳) | 15 | 20 | – | 13~20 | 15 | 20 | – | 13~20 |
3~5 (歳) | 20 | 25 | – | 13~20 | 20 | 25 | – | 13~20 |
6~7(歳) | 25 | 30 | – | 13~20 | 25 | 30 | – | 13~20 |
8~9(歳) | 30 | 40 | – | 13~20 | 30 | 40 | – | 13~20 |
10~11(歳) | 40 | 45 | – | 13~20 | 40 | 50 | – | 13~20 |
12~14(歳) | 50 | 60 | – | 13~20 | 45 | 55 | – | 13~20 |
15~17(歳) | 50 | 65 | – | 13~20 | 45 | 55 | – | 13~20 |
18~29(歳) | 50 | 65 | – | 13~20 | 40 | 50 | – | 13~20 |
30~49(歳) | 50 | 65 | – | 13~20 | 40 | 50 | – | 13~20 |
50~64(歳) | 50 | 65 | – | 14~20 | 40 | 50 | – | 14~20 |
65~74(歳)2 | 50 | 60 | – | 15~20 | 40 | 50 | – | 15~20 |
75以上(歳)2 | 50 | 60 | – | 15~20 | 40 | 50 | – | 15~20 |
妊婦(付加量) 初期 中期 後期 |
+0 +5 +20 |
+0 +5 +25 |
– | –3 –3 –4 |
||||
75以上(歳)2 | +15 | +20 | – | –4 |
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- 範囲に関しては、おおむねの値を示したものであり、弾力的に運用すること。
- 65歳以上の高齢者について、フレイル予防を目的とした量を定めることは難しいが、身長・体重が参照体位に比べて小さい者や、特に75歳以上であって加齢に伴い身体活動量が大きく低下した者など、必要エネルギー摂取量が低い者では、下限が推奨量を下回る場合があり得る。この場合でも、下限は推奨量以上とすることが望ましい。
- 妊婦(初期・中期)の目標量は、13~20%エネルギーとした。
- 妊婦(後期)及び授乳婦の目標量は、15~20%エネルギーとした。
また、厚生労働省の「健康日本21(栄養・食生活 )」は、生活習慣病及びその原因となる生活習慣などの国民の保健医療対策上重要となる課題について、
国民が主体的に取り組む健康づくり運動を総合的に推進していくことを目指しています。
その中では、「日本人の食生活が、第二次世界大戦以降約50 年間に
高塩分・高炭水化物・低動物性たん白質という旧来の食事パターンから、動物性たん白質や脂質の増加など、大きな変化を遂げたことは、
感染症や脳出血などの減少の一因となった。しかし一方で、現在、がん、心疾患、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病の増加が深刻な問題となってきており、
これらの発症に栄養・食生活の関連がみられるものも多い」と指摘されています。
植物性たん白質の種類と成分
植物性たん白質の種類と成分
粉末状 | 粒状 | ペースト状 | 大豆たん白 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
分離 大豆たん白 |
濃縮 大豆たん白 |
小麦たん白 | 大豆たん白 | 小麦たん白 | 小麦たん白 | 大豆たん白 | ||
蛋白質 (%) ()中乾物あたり |
86.0 (90.5) |
64.0 (68.1) |
72.0 (77.0) |
55.1 (58.6) |
21.2 (77.1) |
25.3 (75.5) |
32.0 (91.4) |
|
水分(%) | 5.0 | 6.0 | 6.5 | 6.0 | 72.5 | 66.5 | 65.0 | |
脂質(%) | 0.2 | 0.3 | 9.7 | 0.6 | 0.6 | 3.7 | 0 | |
脂質(%) | 糖質(%) | 4.0 | 21.7 | 10.4 | 30.3 | 5.2 | 3.7 | 2.0 |
粗繊維(%) | 0.3 | 3.5 | 0.2 | 1.7 | 0 | 0 | 0 | |
灰分(%) | 4.5 | 4.5 | 1.2 | 6.3 | 0.5 | 0.8 | 1.0 | |
無機質(mg/100g) カルシウム リン 鉄 ナトリウム カリウム |
50 800 10 1400 300 |
450 820 12 5 1900 |
76 432 8 30 125 |
330 770 12 7 2500 |
27 98 3 27 11 |
25 153 3 196 46 |
30 230 4 274 120 |
※たん白換算係数は、大豆:6.25、小麦:5.70
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植物性たん白の栄養・生理機能
植物性たん白のアミノ酸組成とアミノ酸スコアについて
- 人間は毎日、食品からたん白質を摂取して体内でアミノ酸に分解し、再び組み合わせて身体に必要なたん白質を合成しています。
必要となる20種類のアミノ酸のうち、9つが必須アミノ酸(体内で合成不可・不足)です。 - 必須アミノ酸の充足率や消化吸収率に基づいた「アミノ酸スコア」という栄養評価方法では、大豆たん白は動物性食品と比べて遜色がありません。
一方、小麦たん白はリジンなどが少ないことで「アミノ酸スコア」は低目ですが、他の多くの必須アミノ酸は豊富です。
いろいろな食品を組み合わせて相互補完している現在の食生活を考えれば、小麦たん白の栄養価は十分な評価に値するものと考えられます。
植物性たん白を摂取することで、栄養的・生理的に次のような効果が期待できます
- 植物性たん白は優れたたん白源であり、種々の動物性たん白質と組み合わせることにより、理想的なアミノ酸バランスとなります。
- 植物性たん白自身は油脂をほとんど含まず、食品の油脂分を低く調整することができます。結果的に低脂肪、低カロリーの献立が実現できます。
- 植物性たん白は血清コレステロール値を低下させたり、正常に維持する作用があるといわれております。
また、体脂肪蓄積の抑制等の研究報告があります。